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「神様のパラドックス(上)/機本伸司」読了

機本伸司さんの「神様のパラドックス(上)」読了しやした。
本書は「神様のパズル」の番外編という位置づけであり、アプラDT社からネオ・ピグマリオンが設立されるまでの話、というか樋川さんらを始め、あの会社の創設者たちの物語ですね。
本編では割と加速器が使われていたのに対して、番外編ではほとんど量子コンピュータ一本に焦点を絞ってます。
加速器とは理論が異なるため、(上)では改めて量子コンピュータの原理について、いつものようにガチガチに書かれてました。なので、物語の最初のほうはちょっと読み進めるのが難しかったです。「神様のパズル」に匹敵する難しさかもしれません。
とはいえ、一通り量子コンピュータを用いてなにができるかを説明し終えたあとは、実際に行動に移るのでそこからは面白くなりました。飛行機の弾道飛行(無重力状態)中に量子計算を繰り返し、「神を作ってしまおう」というのが今回のテーマとなります。

で、その神ですが、なにも現実世界の神様を作るわけではありません。
あくまでコンピュータの中の仮想世界上の”解析神”という意味です。ですが、現実世界に限りなく似せるため、ビッグバンから――つまり宇宙開闢から再現(シミュレーション)することになります。
もし現実世界そっくりの仮想世界を作り上げることができれば、未来予測も不可能ではないというのが小佐薙たちの考えです。まずは天候予測などから始め、ゆくゆくはパーソナルレベルでの予測を目指し、それを個人の占いやカウンセリングに活かそうということです。
そのためのシステムとして、量子コンピュータ、スーパーコンピュータ、人工知能(AI)が三位一体となった新しい取り組みがスタートすることになります。

そうそう。小佐薙は神様を作る条件として次の五つを挙げています。
”How”、”Where”、”What”、”Who”、”When”

それぞれを”解析神”に当てはめると、
”How”――システム(プログラム):コンピュータによる他の情報処理と同様、ハードおよびソフト。
”Where”――所在:コンピュータ内の解析世界。および現実世界。
”What”――エネルギー:電磁気的エネルギー。さらに量子コンピュータにおいては、電子スピンなどのエネルギー。
”Who”――コミュニケーション:ジョブの実行(入力と出力の繰り返し)。また、解析神は解析世界の人々の情報の、観測と操作。
”When”――起源:解析神の存在を、現実と”入れ子”構造にすること。

肝心の量子CPUの説明は例によってかなり難しいので割愛。
カーボン・ナノチューブ内に閉じ込めたボーン粒子を、超低温でボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)化するとか、さらに無重力状態において、磁場によって電子スピンの向きをそろえるなどして、均一な量子からみ合い(エンタグルメント)状態にするとか、結果の出力は、スペクトル線や回折などの観測によって、量子CPUにおける電子の運動(スピン)状態を解析することで行われるとか、読み取りのためにガンマ線ビームを浴びた量子CPUは、”ボース・ノバ”と呼ばれる蒸発現象を起こし使えなくなる、とか書いてあったけど、まあ意味不明ですわね。

これ、まだ下巻もあるのでさてどうなるのでしょう。楽しみです。
では、ろりこん!

by broken-range | 2011-11-04 21:50 | 読書レビュー