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「夏季限定トロピカルパフェ事件」読了

「小市民」シリーズ二作目、「夏季限定トロピカルパフェ事件」読み終わりました。

<小佐内スイーツセレクション・夏>により、春季よりもさらにスイーツ成分も謎成分も増した内容になってましたね。ってか、あの表すげえええww
まあ、もっとすごいのは、あの表+地図自体が物語全体の重要な要素になっていたことでしたが。

個別に見て気に入ったのは「シャルロットだけはぼくのもの」と「スイート・メモリー」。
前者は、小鳩君が必死すぎなのが吹いたww
これはラノベ研に書かれていたことだけど、”普通の人ならそこまで深く考えない/やらないことを、徹底的に考える/やる”ことに、人は面白さを感じるんだそうです。

今回の場合だと、たかがシャルロットを1つ食べるだけなのに、いかにその証拠が残らないようにするか知恵を働かせる課程がすごく笑えました。しかも相手は小佐内さん。
小鳩君が”相手にとって不足はない”とか”これは小佐内さんとの戦いだ”と評していたように、対等な者同士の「知恵比べ」的要素も含んでいたのがさらに良かった!
結局、勝者は小佐内さんでしたが、小鳩君にとっては完璧に証拠を消したはずなのに、小佐内さんはどうやって見破ったのか?――それを自分で推理するのもまた楽しかったです。
本編後の解説を引用しますが、
『「シャルロットだけはぼくのもの」は倒叙ミステリのお手本のようなつくりだ。印象的な伏線を張るのではなく、描写がきわめてフラットになっているのは、読者にクイズに参加してほしいという意識があるからではないだろうか。』
春期の「おいしいココアの作り方」もそうでしたが、こういうクイズ/パズル的な短編、読者が気軽に参加できるようなちょっとした謎が自分でも大好きなんだと思います。
それをキャラを上手く立たせながら書くことのできる米澤さんは本当にすごい!

一方の「スイート・メモリー」は終章だけに、夏季限定の一連の事件の総集編、まとめって感じでした。
ここは素直に小鳩君の推理に脱帽。それまでの短編において張られていた伏線を回収し、ひとつの解答を組み上げる――ミステリの醍醐味を見事に演出してくれました。
同時に、この作品が「短編連作」ではなく、「長編」になっている意味もわかりました(まあ、これも解説の受け売りなんですけどね)
そして、小佐内さんまじラスボス。
思えば、今回小佐内さんは自分からあまり動かず、小鳩君にスイーツを買ってきてもらうことが多かったですね。いや、普通に読んでいる限りでは全然疑問にも思わなかったけど、まさかちゃんと意図があったとは……。
うーん、こういうことがあるから米澤さんの作品は侮れない。次からはもっと注意深く読もうかな。

ちなみに現在は、一日一冊読了+執筆2~3時間を目安に生活しています。
目標があれば多少はマシな夏休みになるはず。

では、ろりこん!

by broken-range | 2011-07-28 18:40 | 読書レビュー